解説|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
賃貸の退去費用について、ガイドラインがあるって聞きましたが、難しくないですか?
賃貸の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、法律的な文で難しい言葉が多く使われています。
できるだけかんたんに解説と注意ポイントを紹介します。
国土交通省のガイドラインとは?
賃貸のトラブルは、国民生活センターへの相談件数が2023年度に3位になるなど、決して珍しくなく、悪質な不動産会社や営業マンに騙されてしまうケースも少なくありません。
そこで国土交通省が、賃貸契約に関するトラブルを減らすために作られました。
このガイドラインでは、入居者と大家さんが、お互いに気持ちよく賃貸住宅を利用できるように、「一般的にどうすれば良いのか」ということが書かれています。
不動産会社が独自に作成した契約書が一方的な内容だったり、記載がないなどでトラブルになった時や裁判で判決を出す時の基準となります。
国土交通省のガイドラインの考え方
レンタカーに例えると、返す時にガソリンは満タンにしても洗車代や消耗タイヤの交換費用は料金に含まれているから、借りた人は負担しなくて良いよ。
原状回復とは入居者が借りた状態に戻すことではない
入居時のハウスクリーニングや畳の表替えされた入居者を募集する状態ではなく、「通常の損耗」をされた状態までを負担するのが原状回復です。(4枚目 本ガイドラインのポイント)
特約がなければクリーニングや畳表替え費用は大家さん負担
慣習で退去時に入居者に請求することはダメです。退去時に負担してもらいたい条件は入居前の募集段階から伝えて、不動産会社や大家さんから特約に書かれていない請求をされても、入居者は理由なく拒否できます。(P6 原状回復に関する契約条件等の開示)
入居者がつけた生活キズの修繕費用は大家さん負担
椅子のスリキズが出来たり、クロスの画鋲穴を空けるなどは、普段の生活の中では当たり前です。
これらをまとめて通常損耗と呼ばれ、入居者負担はありません。
使用料として家賃を払っているので、不動産会社や大家さんから修繕にかかる費用を請求されても、入居者は理由なく拒否できます。(P8 表2 原状回復の定義)
入居期間で古くなった部分の修繕費用は大家さん負担
普通の使い方をしていても便座が割れたり、設備が故障するのは、普段の生活の中では当たり前です。
これらをまとめて経年変化や経年劣化と呼ばれ、入居者負担はありません。
使用料として家賃を払っているので、不動産会社や大家さんから修繕にかかる費用を請求されても、入居者は理由なく拒否できます。(P8 表2 原状回復の定義)
自分でつけたキズの修繕でも、入居者が「満額」負担ではない。
子どもがクロス/壁紙にラクガキをしてしまった場合、入居者が負担することになりますが、「減価償却」という考え方が適用され、安くなります。
減価償却とは、「モノは時間が経つと価値が減っていく」という考え方です。
不動産会社や大家さんから修繕にかかる費用を「満額」請求されても、入居者は理由なく減価償却分を拒否できます。(P8 表2 原状回復の定義)
自分でつけたキズの修繕でも、入居者が「全範囲」負担ではない。
子どもがクロス/壁紙にラクガキをしてしまった場合、入居者が負担することになりますが、全室のクロス張替え範囲ではなく、ラクガキをしてしまった1面だけを負担です。
それ以外の部分は大家さんのリフォームであり、入居者負担はありません。
不動産会社や大家さんから修繕にかかる費用を「全範囲」請求されても、入居者は理由なくリフォーム分を拒否できます。(P8 表2 原状回復の定義)
国土交通省のガイドラインの使い方
退去費用の請求に対して、不動産会社や大家さんに反論する時の「根拠・証拠」として使用します。
自分は、ガイドラインという根拠で負担する必要が無いと伝えてます。
不動産会社や大家さんは、どのような根拠で請求してますか?
ガイドラインや最高裁判決・消費者契約法と同等の根拠が無いなら、ぼったくりや架空請求と判断します。
国土交通省のガイドライン解説
ガイドライン 表紙/1P
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」のポイントが書かれています。
ここで大事なポイントは、このガイドラインは3つのことについて書かれているということです。
1つ目は、「原状回復」について、みんなが誤解している部分をはっきりさせたことです。
一般的に「原状回復」というと、部屋を借りたときと同じ状態に戻すことだと考えがちですが、このガイドラインでは、「借りたときに比べて状態が悪くなっても良い」と定義しています。
つまり、建物は時間が経てば自然と傷むものなので、それについては入居者が責任を負う必要はないということです。
2つ目は、実際の部屋探しでよく起こるトラブルについて、具体的な例を挙げて説明していることです。
例えば、「壁紙が少し汚れた場合、誰が費用を負担するのか?」といった疑問に答えるための基準が示されています。
これによって、入居者と大家さんの間でトラブルになるのを防ぐことができるでしょう。
3つ目は、経年変化を考慮している点です。
例えば、築10年と新築では建物・設備の価値が違うので、同じキズ汚れであっても経過年数によって入居者の負担が減ります。
まとめると、このガイドラインは、入居者が部屋を借りる時や、部屋を返す時に、トラブルなくスムーズに手続きを進めるための、とても役に立つものだと言えるでしょう。
ガイドライン P4~5
ここで大事なポイントは、賃貸のトラブルを防ぐために一番大事なことは入居時のチェックだということです。
できるだけ細かくチェックすることであやふやな状態を無くして、もしも裁判になっても証拠があることで解決に向かいます。
ガイドラインでも入居チェック用紙を作成しているけど、実際にはこれだけでは足りないよ。
写真で残すと状況がよく分かるので、たくさん写真で記録しましょう。
賃貸トラブルたすけ隊『入居チェックアプリ』
内容 | iOS、androidの無料スマホアプリ |
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特徴 | 入居チェックページと内容が一緒 日時/物件情報/コメント自動表記 |
操作方法 | 物件情報を入力 撮影場所を選んで撮影 写真にコメントを追加 確認してスマホに保存 |
ガイドライン P6~7.P25~27
ここで大事なポイントは、入居前の説明と特約の条件です。
不動産会社や貸主/大家さんは、契約する前に入居者にしっかり退去時の負担(原状回復)について口頭で説明と、説明をしたことを記録に残すために書面(内容や単価)で提示してから契約しましょう。
具体的には、別表3(P25~27)の内容を伝えましょう。
特約は、3つの要件を満たさないと平成17年12月16日判決や消費者契約法で無効の判決も出ているから要注意!
- 特約の必要性と理由
- 入居者が大家さん負担分を請求されることを知ってること
- 入居者が大家さん負担分を受け入れる意思表示があること
契約前に入居者に説明をして、特約についても具体的に説明が必要ということだね。