原状回復|ガイドラインかんたん解説
正式名称は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で国土交通省が発行しています。
ガイドラインとは?
賃貸の退去費用でトラブルになるケースが多いので国が作った参考資料です。
どんな時に使えるの?
契約書をガイドライン通りにするという内容ではありません。
契約書があいまいだったりトラブルになった時の資料や裁判になった時の判断材料になります。
ガイドラインの考え方
- 退去費用(原状回復)は入居者が借りた状態に戻すことではない
- 特約がなければ次の入居者募集のためのクリーニング費用はオーナー負担
- 普段の生活で付くような傷(通常損耗)を直す費用はオーナー負担
- 自分が付けた傷(特別損耗)でも長く住んでいるのであれば全額を負担しなくて良い
- 負担する単位は最低限度の壊した範囲だけでツギハギOK
- 色合わせやツギハギが嫌などのリフォーム部分はオーナー負担
ガイドラインのページ解説書
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)」からPDFのページ番号で紹介します。
P1~5 挨拶・目次・ポイント
ガイドラインは借りた状態に戻すものじゃないとはっきり書きました。
- ガイドラインをもっと詳しく
-
入居者は家賃(使用料)を毎月、支払っているので壊したり放置をした傷や汚れだけの古くなった価値の分だけを負担すればOK
P5 ★本ガイドラインのポイント原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
と定義
P6~9 入居チェック表
トラブルを防止するのに一番大事なのは入居時のチェック
できるだけ細かくチェックすることでもしも裁判になっても証拠として使用できる
ガイドラインのチェック表は文字だけで写真で残すことも出来ないので【入居チェックアプリ】をオススメします。
- 添付されているチェック表は?
-
これくらい細かくチェックをして、別で写真なども控えて置きましょう。
P8・9 入居チェック表
P10~11 契約する時が大事
契約する時にオーナー側は入居者へ退去費用の内訳(工事内容や単価)を説明しよう
特約は最高裁や消費者契約法違反にならないような内容にしてね
特約が認められるには、入居者が負担することを分かっていることが大事
- 特約の具体的な書き方の例
-
特約や条件は、内容や単価を書いて入居者にキチンを説明が大切。
よかったら別表3を使ってね
P10 原状回復に関する契約条件等の開示このため、賃貸人・賃借人の修繕負担、賃借人の負担範囲、原状回復工事施工目安単価などを明記している原状回復条件を契約書に添付し、賃貸人と賃借人の双方が原状回復条件についてあらかじめ合意しておくことが重要である。その際の様式については、別表3(P.25 参照)を参考に積極的に活用されることが望ましい。なお、原状回復工事施工目安単価は、あくまでも目安として把握可能な単価について、可能な限り記述していくことが望まれるものであり、「例外としての特約」の内容としては、例えば、「クロス張替費用(居室内でのペット飼育を認めるため)」などが想定される。
- 特約は契約書に書くだけじゃダメ
-
入居者が把握して了解した特約は良いが、承諾がなかったり説明してない内容は最高裁や消費者契約法で無効になる可能性がとても高い。
入居者が負担すると客観的にわかるように特約に内容と金額など書きましょう。
P11 賃借人に特別の負担を課す特約の要件- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
P12~19 ガイドラインの考え方
建物や設備が古くなったか壊したか理由をキチンと分けることが大切。
- リフォーム部分はオーナー負担
- 古くなった補修部分はオーナー負担
- 入居者が壊しても古くなった補修部分はオーナー負担
- 入居者が壊して古くなった補修部分以外が入居者負担
ガイドラインだと、入居者が負担する範囲は一部や部分ごとをいいます。
新品に全体を直す=グレードアップ(質や価値が上がる)にあたり、通常損耗(生活キズ)・経年変化(色褪せや劣化)・減価償却(価値が下がった分)もオーナー負担という考え方
- クロスで例えてみると
-
次の募集に備えてにクロス3面分をオシャレで高額なタイプに張り替えたい。
クロスの1面は汚してしまったが、他はキレイ
新築から2年住んだクロスをオーナーが3面張り替える負担は…- 今までのクロスからオシャレクロスの単価の差額はオーナー負担
- キレイな2面分のクロス張替え費用はオーナー負担
- 汚した1面分は価値が2/3しかない。(1/3はオーナー負担)
- 汚したクロス1面分の2/3は入居者負担
- 何で1㎡ではなく1面まで負担を認めるの?
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減価償却で入居者の負担は減るから1㎡単位じゃなくて1面分までは認めるよ
P18 ② 毀損部分と補修箇所にギャップがある場合当該部屋全体のクロスの色や模様が一致していないからといって、賃貸借の目的物となりえないというものではなく、当該部屋全体のクロスの色・模様を一致させるのは、賃貸物件としての商品価値の維持・増大という側面が大きいというべきで、その意味ではいわゆるグレードアップに相当する部分が含まれると考えられる。したがって、当該部屋全体のクロスの張替えを賃借人の義務とすると、原状回復以上の利益を賃貸人が得ることとなり、妥当ではない。
他方、毀損部分のみのクロスの張替えが技術的には可能であっても、その部分の張替えが明確に判別できるような状態になり、このような状態では、建物価値の減少を復旧できておらず、賃借人としての原状回復義務を十分果たしたとはいえないとも考えられる。したがって、クロス張替えの場合、毀損箇所を含む一面分の張替費用を、毀損等を発生させた賃借人の負担とすることが妥当と考えられる(このように賃借人の負担範囲を大きくしても、経過年数を考慮すれば、金銭的な負担は不当なものとはならないと考えられる)
P20 原状回復の考え方イメージ
ボッタくりでトラブルが多いからガイドラインを作ってるので出来ればこの通りの流れが理想
という案内で強制力は一切ない
- 実際はどうしたらいいの?
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何に気を付けるかわかる目安リストと考えましょう。
それぞれのタイミングで出来る対策や予防はこちら
P20 それぞれの項目を詳しく- 契約時
- 入居チェックが大事!
- 契約書はよく読んで
- 入居時
- 生活キズ以外は入居者負担だから注意
- 家賃の支払い日などに気を付けて
- 退去時 立会い
- どっちが負担するか話合おう
- 退去後
- 見積もりで確認して合意しましょう。
※情報や知識に差がある相手がぼったくりをしても素人には判断できないため、退去立会いは絶対にオススメしません。
退去立会いをしないほうがいい理由! - 契約時
P21~25 どっちの責任? まとめ
クロスや柱・畳などの項目別に「誰が負担する」をまとめた一番知りたいページ。
また、入居者が退去時に「通常の清掃」をするように求めています。
- 「通常の清掃」を詳しく
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退去時に掃除をするだけで余計な退去費用を防ぐ効果があります。
逆にや油汚れやゴミ撤去をしないと負担が増えるよ
退去時の通常の清掃- ゴミ撤去
- 換気扇やレンジ回りの油汚れの撤去
- 掃き掃除
- 拭き掃除
- 水回り清掃
賃貸の大掃除はどこまでやるべき?賃貸退去時と年末の掃除でこんなに変わる相場とコツ
P26~28 負担する枚数や㎡は?
入居者が負担する場合に1枚・㎡単位なのか、古くなった分だけの負担で良いのか(減価償却されるか)まとめ。
入居者が負担する部分から、このリストを使って減価償却しましょう。
P29~31 契約書に添付してね
ガイドラインの考え方をまとめたページを契約書に添付して、トラブルにならないようにしてね
P31(特約の明細)を添付しない・空白で特約の条件を満たさない契約が多い
- このページが契約書に無いと、どうなるの?
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P29~31 不利な特約と金額ページが無いと?
- 契約書に添付しなくても違法ではない
- 違法ではないが、特約が無効の可能性が高い
- 退去時に争う可能性がとても高くなる
- 単価を決める権利はオーナー側。変更を強要できない
- 敷金や家賃の金額のように契約前に金額を把握して嫌なら他を探そう
P32~33 退去費用の請求書 見本
ガイドラインの考え方を反映した請求書の見本です。よかったら使ってね
ここまで細かい明細を出す不動産会社はありません。
悪質業者は、単価・㎡・経過年数・減価償却などの項目すらありません。
- 自分の請求書と見比べるとわかりやすい
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ガイドラインの明細=単価・㎡・経過年数・減価償却など
費用を請求する側には『明細』をあなたに伝える証明責任があります。
また、正しい退去費用は明細が分からないと正しいかぼったくりかの判断すらできません。
P32~33 あなたの請求書が…- 単価や㎡が無ければテキトー
- 減価償却や経過年数がないならテキトー
- 数量が全部一式ならテキトー
- 特約にない畳やクリーニング・エアコン清掃はぼったくり
- 諸経費や出張費があったらぼったくり
- オーナー負担割合がないならぼったくり
P37~38 トラブルの解決法を紹介
裁判以外にも解決方法があるので参考にしてね
ガイドラインで紹介している解決法の中でオススメは少額訴訟法だけ。
他には法テラスで無料弁護士へ依頼と都道府県の不動産課に証拠を集めて処罰をお願いしましょう。
- それぞれのオススメ度・メリット・デメリット
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少額訴訟手続き( )
〇 敷金を預けてたらとても有効
〇 相手と議論が要らない
〇 裁判よりは時間がかからない
〇 敷金返金用の専用用紙がある
× 敷金がないなら使えない
× 早くても1ヶ月以上の時間がかかる調停・仲裁・ADR( )〇 訴訟より時間がかからない
〇 相手が応じるなら解決も早い
× 相手が応じないとムダになる
× 和解を目指すので負担が発生する
× 時間をかけて負担しなくて良い金銭を認める手続きする?消費者センター( )× 相談窓口が素人で話が伝わらない
× 不動産会社に注意もしてくれない
× 不動産業界からなめられて効果なし
〇 消費者センターに相談してもぼったくりした「悪質性が高い証拠」を残せる。不動産協会・宅建協会( )× 不動産会社の職員が対応で隠ぺい体質
× 相談窓口が対面で予約制のみ
× そもそも電話が通じないケース多数
× メールなど記録に残すことを嫌がる
× 録音も認めず、名刺もくれない・名前も教えない法テラス( )〇 無料で弁護士に依頼が出来る制度
〇 弁護士が指摘するとぼったくり防止に
× 賃貸に詳しくない弁護士もいる
× お願いするために年収などの要件がある都道府県の不動産課( )〇 不動産会社に免許を発行する立場
〇 不動産会社に行政指導を行う立場
〇 行政処分は避けたいのでキチンとしてもらいやすい
× 悪質な証拠を集めないと動かない
ガイドライン まとめ
最後に、この記事の要点をまとめます